■ きょうは、漢方の「五味調和」という考え方について教えてもらいます。「五味調和」とは?
◎食養生の基本原則。
◎五味とは ①「酸・・酸っぱいもの」
②「苦・・苦味や渋みの物」
③「甘・・甘味のあるもの」
④「辛・・辛味や香りのあるもの」
⑤「鹹味(しおからみ)・・しょっぱいと感じるもの。塩気やミネラルのこと
◎五味が絡み合って体が喜ぶオイシイ食べ方ができる。
◎合成したり、単品で抽出したものではないということが大切。自然界の物は、必ずバランスが取れるようになっている。
◎おいしい料理を作るということは、おいしく調理するということ。舌がおいしいと判断すること。
⇒本当の味は体に良く、バランスも良く調理されたものであるはず。
■ 辛い料理はブームにもなりましたし、寒い冬食べたくなりますね。辛味にはどんな役割があるんですか?
◎辛味の多くは気剤
◎五行では金、季節は秋で、経絡でいうと、肺・大腸経に属す。
◎秋は空気が乾燥し肺に負担をかけるので、辛味を加えて発散を助ける必要がある。
◎また辛味には防腐作用もある。
◎『スパイスは腐り止め、尿酸値が高い人がとんかつ食べたければマスタードをべったり塗って食べればいい。刺身を食べる時、しょうゆにどっぷりつけても寄生虫は死なない。ワサビでは死ぬ。』
⇒薬味はたんぱく質・食肉の害を消す。
■ 辛味が不足してしまうとどうなりますか?
◎大・小腸に負担がかかる。
◎腸が腐らないように解毒するのは肝臓。肝臓に負担がかかれば痛風にも簡単になってしまう。
◎もうひとつ大事なことは、辛味は発散剤(気を晴らすと)だということ。⇒アロマ
◎鼻炎や皮膚トラブル、アトピーなどは、体表の発散不良。香辛料もうまく使うとアレルギー性鼻炎や喘息などは簡単に和らぐ。また治すためには食養生として取り込むことが大切。
2枚目へ
■ 普段の食生活に「辛味」をうまく取り入れるには? 料理のコツなどアドバイスをお願いします。
◎フランスでは主婦のレベルを見るのはスパイス棚と言われる。
◎私たちの研究会では、10数種類の日本人のおなかにあわせた蘭香というスパイスをまず使い慣れてもらっている。肉や油もの料理だけでなくカレーに入れれば一味おいしく、中華風スープやオニオンスープなどにも合う。外食の方にも最適。
◎まず、香辛料慣れすること。マヨネーズには蘭香を入れて「マヨラン」。煮魚にはたっぷりの生姜。そばにはトウガラシと、普段から薬味を使うことを心がけるということが一番。
◎使い慣れない方用にペパーソルトやハーブソルトも用意しているが、食品メーカーもかなりスパイスを取り揃えているので、暇なときに眺めてみては。
■漢方薬では、どのようなもので辛味を摂れますか?
◎お腹の張りがひどい方や、しくしく痛む方、軟便になり易い方などには食品では「蘭香」、漢方薬では「安中散」がある。常備薬としては安中散を持つと良いでしょう。
◎漢方薬はきちんと合っていればそのかたにとっては胃腸薬みたいなもの。胃が弱いけれど漢方薬は大丈夫?などということはありえない。
■何か注意点はありますか?
◎激辛ブームなので唐辛子には注意が必要。血液中を温めるので、臓器に炎症を抱えている方や高血圧の方はほどほどに。
◎また今の季節料理としてカニ料理があるが、カニそのものは大寒といって非常に体を冷やす。小さい子がそのまま大量に食べると、腸が冷えて白色便になってしまうこともある。必ずワサビや生姜、レモン、ポン酢、黒酢などをきちんと使ってほしい。最後の鍋で薬味をたっぷり食べることを忘れないで。(酸味は温めます。)
茂子先生、ありがとうございました。
次回も引き続き、「食養生」の「五味」について教えていただきます。
静岡市清水区にある漢方の専門店「蘖薬局」の堀茂子さんでした。