茂子先生、今年もよろしくお願いします。
■前回は漢方の基本的な考え方を教えてもらいました。
中国で始まり、日本に入ってからは日本人に合うように進化してきたということでしたね?
・漢方薬の原料である生薬は神農さんという神様のような人が、野山を駆け回り365種の薬草を発見したところから始まります。
・日本人に合わせ、江戸時代から明治・大正・昭和と文学者や薬学者が苦労してつなげてきました。
■前回は、漢方と「食養生」のお話がありました。
良い食べ方をしていれば良い体に、悪いものを取り込んでいけば歪んだ体になるということですが…
食べ方というのは紀元前のさらに昔から各地にその方法が伝えられています。現代の日本が日本人に残されたいわゆる郷土料理ですが 忘れ去られているのです。
・「食養生」の考え方…日本人の民族・気候風土に合わせた食事を摂ることが大切。郷土料理に残されています。
・日本人は腸の長い草食民族で、農耕民族という長い歴史があります。その土地その土地の料理には、生きていくための智慧が入っています。草食民族が肉食をするには、腸を守る食べ方が必要になります。湿気の多い国ですので、大陸のまねをしたら体が壊れます。五味調和の中の辛味・・肺・大腸経に働く薬味が必要ということになります。
■では、堀さんからご覧になって、現代人の食生活はどのように映りますか?
・本来の調理という概念が欠けてきているようです。
・「食養生」の考え方では、酸味/鹹味(しおからみ)/辛味の調和が大切です。
・例えば、塩は長いこと昭和46年に塩田が撤廃されてからはまともな塩気をとっていません。(「Nacl」ですが、減塩していると腎の力が弱くなってしまいます。(なくなった理由です。ミネラルの不足は人体にとってありとあらゆる場所でトラブルを起こします。)良い塩気は人体の細胞が生きていくために、正常な働きをするためには欠かせないものなのです。血液はかなりしょっぱいのです。
■外食の機会が増えたのも最近の傾向ですね?
皆忙しくなっているので仕方がないことですし、食べることは人間の最大の楽しみのひとつですよね。
・「簡単に済ませる」という考えが増えているので、外食や冷凍食、保存食だけでは不足する栄養物質があります、ですから偏りをなくすということは大事です。私は1週間の間に修正してねと言っています。
・昔からの梅干しは、肝臓と腎臓を守る食べ物です。良い塩梅という言葉はここからきています。また、日本人にとっての発酵食品は、味噌・醤油・納豆・漬物・麹でした。このような食品を是非取り込んでください。発酵食品が不足してきているので、大腸がんや胃がんが増えているのではないかと思われるくらいです。発酵食品は腸管免疫を強くします。癌になった方などにはここが大切になります。
・ですから、食事で摂りきれないもの、バランスが悪い時は、その方に合わせて必要な漢方薬や食材を薦めています。
■漢方薬というと長く飲まなくてはとか、自分には合わないという方もいらっしゃいますが…
そもそも漢方薬は一人一人にきちんと合わせるのですから合わないということはないのです。
合わないのは自分に合った処方ではないということです。
長いく飲むということは長いこと病気をしていたからで病気になった原因を作っていただけの時間がかかります。楽になるのは早いのですけれど、今かせ引いたというときには今飲めば1回で治ります。寒くなると腸の力が弱るので吐き下しの風邪が多くなりますがこれも1~2回で回復します。
(・患者の体質、病に対する抵抗力、病の原因、病邪の位置、病の時期、症状など、病の全体像を示すと共に治療方針を指し示すものを「病証」と呼びます。
・漢方薬というと病証に合わせるということが必要ですが、)また、一生を守るという飲み方があります。
(・そのようなものに使われる生薬を料理に使う方法として、)例えば、最近は見かけませんが、京都には小建中湯という子供のお腹を守る処方に似た飲み物があります。昔は駄菓子屋さんではニッキの棒やニッキ味の紙が売っていました。
・また、水気をとりこむとき、静岡は緑茶が多いですが、眠りにくくなったり、小水の出が悪い、肌が荒れやすいという方は、ハト麦のお茶を取り入れることも手です。弘法麦ともいわれ弘法大師さまが日本人に合うと持ち帰ったものです。さらに病気を持つ方には、三養茶というハト麦のエキスがあります。病気にならないための方法は瘀血の処理と水の処理です。三養茶と簡単な駆瘀血薬を常に飲んでおくとよいのです。また、風邪など早く治すためには手元に置いてほしい漢方薬があります。
・漢方の常備薬をマスターしていただければ家族の健康を守れるようになります。
■その時のその方の状態に合わせて…ということですね?
・漢方薬の選び方に、女性を花に例えたものがある。
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿はユリの花」
立てば芍薬…おへそが立ったら気も立ってきます。 芍薬の入った処方のものを
座れば牡丹…お尻が重くなって、どっこいしょというようになったらボタンの入った処方を
歩く姿はユリの花…百合の花は頭が重くいつもゆらゆらしている 神経症などに用います。
・処方名を当てはめるのではなく、人体の異変に生薬を当てはめていくのが、漢方の選び方
茂子先生、ありがとうございました。
次回は、「食養生の辛味」についてより詳しく教えていただきましょう。
静岡市清水区にある漢方の専門店「蘖薬局」の堀茂子さんでした。